BISTROT LA CUCINA の歴史は、私と主人が12年前に東急文化村のオーチャードホールへ「モーストリー モーツアルト」を聞きに言った事に始まります。演奏会のあとの優雅で心地よい気持ちのまま食事をしたかった私たちは途方にくれました。とりあえず、そのころ渋谷では話題のイタリアンレストランへ行ったのですが、心地よい気分は 雑踏の中に消えてしまいました。
そして これは 自分たちで造るしかないと思い立ったのです。
これがBISTROT LA CUCINA 誕生の始まりです。
私と主人との新婚旅行先はイタリアでした。おいしいもの大好きの私たちはイタリアでたくさんのレストランを食べ歩きました。高級レストランから、海辺の小さなパパとママだけでやっているような店、そして、料理自慢のプチホテルのレストランにも・・・
私たちのお気に入りは堅苦しい高級レストランの味ではなく、海辺の新鮮な魚料理をつかったママの味でした。各地方の新鮮な材料を使ってこそがイタリア料理です。
新鮮な材料を使っておいしい料理をつくり、それを気楽に食べられる店。そして、まるで、イタリアにいる気分を味わえる店の内装と雰囲気。
店の内装は テラコッタ色の土壁を 洞窟のようにあしらい、テーブルには手造りのテーブルクロス、カウンターは ゆったりと食事の出来る奥行きのあるカウンター席にし、手造りのランチョンマットで飾り付けました。
店の雰囲気は お客様が造ります。若者の街渋谷で 20代後半〜30代 そして 中年層の方でも ゆっくりと食事できる店。決してにぎやか過ぎるのでもなく 静か過ぎず 人々のつくる心地よい ざわめきのある店。
私たちの理想の店のコンセプトは決まりました。
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料理はコックの主人にまかせるとして、料理にかかせないのがワインです。
幸運なことに 私たちはすばらしいワイン輸入業者とめぐり会えたことで、街角の酒屋では決して買えることのないような限定輸入のイタリアワインを手に入れることが出来ました。
そして、いろいろな種類の おしいワインを召し上がっていただきたく、日替わりでグラスワインを数種類サービスすることにしました。
さらに 一番重要なことはサービスです。幸い、私はJALで5年間スチュワ−デスをしていたので、接客には少々自信がありましたが、堅苦しいサービスではなくフレンドリーなサービスを心がけました。
さらには、イタリアに居る気分にさせるサービスを……。
そして、ある事を思い出したのです。
イタリアの料理自慢のプチホテルの夕食でのこと。そこのおじいちゃんが 直接サービスをするのではなく お客様とお話をしにだけ出てきていた風景です。
ゆったりとした時とフレンドリーな雰囲気を造ってくれていたのです。何てステキなんでしょう…。
私たちはイタリアに住んでいた事もあり、昨年渡伊100周年をむかえたおじいちゃん店長を6年前に迎えることが出来、今ではイタリアの話を店で花咲かせてもらっています。
外人のお客様も多くなり、語学の出来る、そして、日本人的HEARTのある外人スタッフも加わりました。
今では オーチャードホール・NHKホール・PARCO劇場でのアフターシアターのお客様が気楽に多数見えていただけ、うれしいひと言が聞けます。
「劇場での優雅な気分を そのまま持ち続けて おいしい食事の出来る店ですね。」と……。